毎日12時間労働はやっぱりキツイ。労働時間を減らしたい時にすべきこと

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毎日12時間労働はやっぱりキツイ。労働時間を減らしたい時にすべきこと

朝も暗いうちに自宅を出て出勤したのに、退勤したらもうすでに日が変わっている…そんな毎日を過ごしてはいませんか?週末になると日常の疲れから泥のように眠り、気がつくともう月曜日の朝だったという過ごし方は、体力的に辛いのはもちろんのこと、精神的にもすり減ります。この記事では、このような生活から脱却するために何をしたら良いかを具体的に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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この記事のもくじ

12時間労働を毎日繰り返すのはどう考えてもしんどい

会社における定時は9時5時(くじごじ)と言われるように、午前9時から午後17時までというのが一般的でしょう。その中に1時間休憩時間があるとすると実働時間は7時間です。

1日12時間勤務ということは、この勤務時間に加えて5時間勤務するという計算になります。9時に出社したとすれば、退勤時間は22時です。
22時に退社してから帰宅し、食事を取り寝る準備をすれば、当然日付を超えてしまうでしょう。翌日も9時に出社しようとすると、気分のリフレッシュどころかまともに睡眠時間も取れません。遠距離通勤されるような方の場合、睡眠時間が5時間以下ということにもなりかねず、いつ過労死してもおかしくはありません。

決算期や繁忙期など、一定期間に勤務時間がとても長くなる時期があるのは致し方ない部分もありますが、恒常的に毎日12時間労働を繰り返すのは働き方として無理があります。

働き方改革で、時間外労働には厳しい上限規制が課されている

ご自分の意思で労働時間を短くできる方は何とか工夫してみましょう。しかし、自分の意志や意識とは関係なく12時間労働を強いられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

法律の上では、1日の労働時間は休憩時間を除いて8時間と定められていますが、その時間内ですべての業務が完了している企業はとても少ないのが現実です。「それなら、そもそも1日12時間も働かせるなんて違法なのでは?」と思った方に結論からご説明します。

12時間労働は働き方改革の中で罰則付きで禁止されている

このような働かせ方は「働き方改革」の中で罰則つきで禁止されています。2020年4月から、中小企業も含めてすべての企業に規制が適用されています。

労働基準法では、使用者は労働者に1週間につき40時間を超えて(休憩時間を除く)労働させてはならないと定めています。また使用者は、1週間の中でも1日8時間を超えて労働させてはならない(休憩時間を除く)とも定めています。これがいわゆる「法定労働時間」の定めです。
(出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

さらに、毎週1日以上の休日を与えることも義務付けられています(同法第35条)。
ただし、会社と労働組合や労働者の代表が36協定(通称:サブロク協定)を締結して労働基準監督署に届け出れば、一定の範囲の時間外や休日労働は認められます。
これも青天井ではなく、上限時間の定めが明確になっています。違反した場合には刑事罰が科されます(同法第119条)。

具体的な規制内容

(1)時間外労働の上限規制の原則は「月45時間・年360時間まで」です。
それでも、通常予見できないような業務量の大幅な増加などの場合には「労使協定の特別条項」を締結して、一定の範囲までの上限超過が認められます。

(2)この「特別条項」も青天井ではありません。
1.まず、年720時間までという大きな制約があります。
さらに、年のうち6ヶ月は法定外労働時間が45時間以内でなければなりません。
(即ち下記2の特例は年6回以内しか認められません。そもそも臨時的特別な場合の例外です。1年の半分を超えてしまうならば「臨時的特別な場合」等とは言えないからです。)

2.超過可能な6ヶ月も休日労働含み以下の制限があります。

  1. 1ヶ月でも100時間以上は不可。
  2. 2ヶ月から6ヶ月の平均のどこをとっても80時間以内でなければならない。

(例)4月が99時間、5月が62時間の場合⇒2ヶ月平均では80時間超になるので不可!
※この時間計算には休日労働も含まれます。

この基準は労働災害の過労死ラインそのものです。
休日労働を含めてこのような時間を超過すると脳心臓疾患などの原因になりかねないのです。労働基準監督署では過労死かどうか判定する場合に、この基準時間を超過しているかどうかを重要な拠り所としています。
要するに「国家として死ぬような働き方は許さない。」ということなのです。

3.上記1、2の規制は特別条項有無にかかわらず順守しなければなりません。
(例)時間外労働が45時間以内に収まっており、特別条項に該当しない場合でも、
時間外労働=40時間、休日労働=60時間で合計月100時間以上になると違反です。


(図解の出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

あなたの12時間労働はほぼ間違いなく違法!

あなたの毎日の実労働時間が12時間ということは、法定労働時間8時間を4時間分超えています。

例えば、週5日、月に20日働くとすれば、それだけで時間外労働は80時間になります。36協定の特別条項があっても、年に6回は月45時間以内でないといけません。まずは、この規制に違反します。

さらに、年6回の45時間超えについても、2~6ヶ月平均で月80時間を1分でも超えることは、一切許されません。

例えば、80時間超が2ヶ月続いただけで違法です。4月が80時間、5月が70時間、6月が91時間ならば、3ヶ月平均で80時間を超えるので違法です。この計算には休日労働を含みます。5月が70時間だとしても、一日だけ10時間の休日労働をしていれば合計80時間です。4月5月でたった1分超過してもその時点でアウトです。

平日の時間外が80時間で、2回休日出勤してそれぞれ10時間ずつ働いたとすれば、合計100時間です。ひと月でもこのようなことがあれば即刻違法となります。
この80時間規制や100時間規制は労働者の生命を守るための規制です。違反した場合には使用者には6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金、という刑事罰が科されます(同法第119条)。

以上を考えれば恒常的に毎日12時間労働ということは、もはや許されない、と考えられます。

もう12時間労働なんて辞めたい…。そんな時にすべきこと

先にご説明したとおり繁忙期の一定期間だけ12時間勤務が生じてしまったということではなく、日々終わりも見えずに12時間勤務を続けさせられているとすれば、明らかに労働基準法違反です。
自分の身を守るためにも何かしらのアクションを起こさなくてはなりません。具体的に取るべきアクションをご紹介します。

餅は餅屋、公的な相談機関や専門の相談機関に相談してみる

公的な相談機関というと「労働基準監督署」がまず頭に浮かぶかもしれません。しかし、労働基準監督署は監督機関・取締機関であり、すぐに柔軟な対応してくれるとは限りません。会社と交渉してくれるわけでもありません。
以下で公的な相談機関や民間の頼りになる機関をご紹介します。

真っ先に相談すべきなのは都道府県労働局「総合労働相談コーナー」

職場のトラブルに関する相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。専門の相談員が面談もしくは電話で対応致してくれます。予約不要、ご利用は無料です。必要に応じて労基署など関係機関への取り次ぎもしてくれます。

(参考)厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
各都道府県の総合労働相談コーナーの所在地なども掲載されています。

労働基準監督署

あまりにも長時間労働がひどく、すぐ監督機関に訴えたいときには労働基準監督署に直接相談しても良いでしょう。所在地は次の通りです。
全国労働基準監督署の所在案内 (全国に320ヶ所以上あります。)

派遣ユニオン

また、正社員・派遣・パート・アルバイト等、あらゆる立場の労働者の労働問題を取り扱う「派遣ユニオン」に相談することもできます。ひとりでも誰でも加入できる労働組合で、加入金(4,000円)のほか組合費(毎月3,000円)が必要となりますが、団体が会社と直接交渉してくれるのでひとりで悩まずに済むのが大きなメリットです。交渉で解決しない場合は、労働争議にも持ち込むこともできます。そのほか、労働者のための学習会なども開催しているので何かと頼りになるでしょう。

(参考)「初めての方へ – 派遣ユニオン

相談の前にできるだけ資料を用意する。

以上の相談機関などについて、電話で一度不明な点などを質問してみるのも良いですが、もしすぐにアクションを取ってもらいたいのであれば、十分な資料を持って直接足を運ぶほうがスムーズに事が運ぶでしょう。

その際には、以下の書類が証拠となります。忘れずに用意しておきましょう。職場によっては労働時間の違法性を把握した上で長時間労働を敷いており、出退勤の時間をごまかされている場合もあるので、そのケースでも対応できる書類をいくつかご紹介します。

  • 出退勤の記録をしてあるもの(タイムカードなど)
  • 勤務時間のわかるメールのやり取りなど
  • 残業代が記された給与明細
  • 日報など

そもそも、タイムカードを定時で切らせた上で残業させたり、時間管理の証拠が残らないように工夫をして労働をさせているということ自体が労働基準法違反です。その実態についても伝えましょう。

12時間労働に疲れたら…思い切って、転職する!

様々な相談機関に足を運ぶのも手ですが、まず自分自身の安全を確保するためにも転職活動をしてみてはいかがでしょうか。公的な機関などが勤務先の労働環境改善に取り組んでくれた場合でも、すぐに大きな改善が起こるとは考えにくいからです。

企業の体質が改善していく過程をともに過ごすことも多少なりとも価値はありますが、キャリアにおける貴重な時間をロスしないためにも、転職を考えた方が良いケースもあります。

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辞めるべきか迷ったら転職エージェントに相談

現職を辞めるべきか、続けるべきか。迷った時に誰に相談しますか? もっとも身近なのは家族や友人、同僚でしょう。ただ、辞めたい理由を話したところで引き留められる可能性も十分あります。それもそのはず、辞めるのは簡単ですが、転職が難しいことは誰でも分かっているのですから。「もう少し我慢してみたら…」と言われてズルズル働き続けることになり、気付いたら定年…なんてこともあながち冗談ではありません。

そんな時は、身近な人の意見に引きずられずに、思い切って自分で判断することも、未来を切り拓くためには大切です。では誰に相談すれば良いのかと言うと、転職エージェントです。今の自分の立場を客観的に判断してくれますし、自分に合った転職先も斡旋してくれます。転職エージェントの利用は在職中でも可能なので、相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。

転職エージェントにいつ相談するのが賢いかについては、在職中のほか、退職後という選択肢もあります。タイミングについての詳細は、下記の記事を参考にしてくださいね。
転職するのは退職前?退職後?転職を決意してから退職するタイミングの見極め方

12時間労働が習慣になっている人も確かにいるけれど…

長時間労働大国である日本では、1日12時間勤務を何年にも亘って続けながらも、その実態を問題視していない人もまま見受けます。「働きすぎで体を壊してようやく半人前」といった誤った価値観を持っている人が周りにいる場合には、ともかく距離を置くようにしましょう。なぜならば長時間労働が慢性化すると以下のようなトラブルが生じるからです。

  • 体調が振るわない
  • 人間関係が希薄になる
  • やる気が起きない
  • 人生に楽しみを見いだせない

具体的にどのようなことなのか追ってみましょう。

体調が振るわない

1日12時間も勤務をしていれば、当然睡眠時間や食事を摂る時間が目減りします。その結果体調がじわりじわりと悪化していくことは目に見えています。

人間関係が希薄になる

平日12時間勤務を続ければ、休日に友人や家族と時間を過ごすことでリフレッシュするような余裕もなくなります。人間関係もだんだんと薄くなっていくでしょう。

やる気が起きない

リフレッシュのタイミングがあってこそ、「明日からまた頑張ろう!」と思えますよね。その時間や余裕もないままでは、やる気はどんどん削がれていきます。労働生産性も低下します。我国の労働生産性は欧米に比べて著しく低いのですが、その大きな原因が長時間労働にあると考えられています。

人生に楽しみを見いだせない

末期的な症状ではありますが、1日12時間勤務を続ければ、それ以外のことに充てる時間はなかなかありません。先に挙げたリフレッシュもせず、友人との時間もなく、ただ業務に勤しんでいるだけでは徐々に人生の楽しみを見出すような余裕も失われます。

おわりに:12時間労働は危険な働き方です

長時間労働で残業代をもらえるのなら、多少の犠牲は厭わない!と考えている方も、この記事を機会に考え方が変わってきたのではないでしょうか。プライベートと仕事のオンオフができ、リフレッシュしながらでなければ仕事は効率よく進められません。継続的な長時間労働は、そのようなチャンスを失わせ続ける危険な働き方です。今何をすべきかよく考えて、次のステップに踏み出してみてくださいね!

監修者コメント

我国では、長時間労働が美徳であるような風潮がありました。大きな間違いです。働き方改革実行計画は、長時間労働が健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になってきたと、厳しく指摘しています。要するに国を滅ぼすことになりかねないと考えています。
このために刑事罰まで科して労働時間の上限規制を厳格化しているのです。長時間労働に無用な我慢をしてはなりません。本稿で指摘したように適切な相談機関に相談し、場合によっては転職も考えていきましょう。それはあなたのためだけではなく、この国の未来を切り拓くことにもつながるのです。
(参考)働き方改革実行計画(概要): https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf

監修者プロフィール

玉上信明(たまがみ・のぶあき)

社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー
三井住友信託銀行にて年金信託・法務・コンプライアンスなどを担当。
2015年10月65歳定年退職後、社会保険労務士開業。執筆・セミナーを中心に活動。
人事労務問題を中心に、企業法務全般や時事問題にも取り組んでいます。