未経験や第二新卒でも貿易事務に転職するには?仕事のやりがい、スキル、転職方法の本当のところ
語学を使用する仕事に憧れを持つ人は多いものです。そうした仕事は総じてハードルが高く、憧れだけで諦めてしまいがちですが、貿易事務は学歴も経験も必要がないことをご存じでしょうか?
本記事では貿易事務の実情や、未経験や第二新卒から貿易事務を目指すためのノウハウをご紹介します。
この記事のもくじ
貿易事務とは?
- 海外との取り引きにおいて貨物輸送の手配をする
- 一定の語学力と専門用語への理解が必要
「貿易事務」とは、海外企業と輸出入を行う企業において、その取り引きに関する事務業務を担当する職種を指します。社内で書類作成や申請、手続きをするのがメインの仕事であり、それだけなら「一般事務」の業務と大差はありません。
しかし貿易事務には、海外とのやり取りという点で一定の語学力と、貿易に関する専門的な知識が求められます。そのため、同じ事務職でも一般事務とは別次元の職種とされ、企業によっては貿易事務が営業部門と連携し、経営を支えているというケースも存在します。
職場は、企業の本社が存在する都市部(東京・大阪など)がメインです。基本的には職場内での勤務ですが、業務内容によっては関係機関に足を運ぶこともあります。
こうした背景から、語学が堪能な人が都心の大手商社に勤務しているのだろう…というイメージを持ちがちですが、厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」によると、就業者数は全国に695,070人(東京都:89,430人)、平均年齢は41.3歳であり、実際は地域・年齢に偏りがないことが分かります。しかし同サイトでは、有効求人倍率が0.62倍とも記載しています。令和2年度平均の有効求人倍率が1.10倍であることから鑑みても(一般職業紹介状況(令和3年3月分及び令和2年度分)について|厚生労働省)、人気職種であり、貿易事務への転職はなかなか狭き門であると分かります。
なお、貿易事務に挑戦する前に、ハードルがそこまで高くはないその他の事務職でキャリアを積みながら、貿易事務に必要な英語力を独学で上達させるという考え方もあります。一般事務職についてはこちらの記事を参考にしてください。
貿易事務の役割・仕事内容
貿易事務の仕事は、英語を使用するのが大前提です。また、職場によってもさらに仕事内容が細分化します。
- 貿易書類の作成・処理
- 輸送・通関手配
- 出荷・納品管理
- 電話・メール・来客対応
- その他
貿易事務が勤務する代表的な職場「商社・メーカー」「通関業者・海貨業者」「船会社・航空貨物代理店」の3つで比較してみましょう。
商社・メーカー
商品の受発注、貿易書類の作成、輸送・通関の手配などが中心であり、一般的な事務職が担当する郵便物の発送や仕分けなども担当する場合もあります。
通関業者・海貨業者
貿易書類作成や、輸送・通関の手配に加え、ルート・スケジュール確認、取引先との折衝なども貿易事務が担当します。
船会社・航空貨物代理店
ブッキング、B/L(船荷証券)の発行など、輸送に関する業務をメインに行います。
貿易事務の仕事の魅力ややりがいは?
貿易事務の仕事の魅力ややりがいを確認してみましょう。
語学力をキープできる・伸ばせる
語学は、使用しなければどんどん語学力が衰えていきます。貿易書類の作成、取引先とのコミュニケーションなど、日々の業務に母国語以外の語学を使うことで、その衰えから逃れられるばかりか、働きながら語学力を伸ばすことも可能です。貿易事務で培った語学力は、例えば外資系企業や気鋭のベンチャーなどへの転職時においても有利に働くでしょう。
コミュニケーションスキルの向上
貿易事務は、国内外の取引先はもちろん、保険会社や銀行などさまざまな異業種とコミュニケーションをとる必要があります。もちろん、企業内での上司や同僚とのやり取りも発生します。お互いの価値観をすり合わせていく中で、コミュニケーションスキルも格段に向上します。
また、海外の人は日本人と考え方や伝え方が違うので、意思疎通を通じて刺激も受けられます。業務を通じてワールドワイドな感性や感覚を身につけられるのが貿易事務の仕事のいちばんのメリットかもしれません。
貿易事務の仕事で大変なこと
貿易事務の仕事で大変なことは大きく3つあげられます。
海外との時差
海外とのやり取りがメイン業務である貿易事務が悩まされがちなのが、「時差」問題です。例えば、日本は昼間でも取引先の企業は夜中。また、その逆も然りです。結果的に、早朝や深夜など、時間外に業務にあたることも珍しくはありません。
天候や社会事象に影響を受けやすい
例えば台風や地震で船便が出なかったり、取り引き国でテロがあったり…不測の事態により輸出入がストップし、業務が滞ってしまうのも貿易事務の仕事の「あるある」です。こればかりは貿易事務個人が解決できる問題ではなく、見通しを立てられません。
語学力を意外と活かせない
語学力を活かしたくて貿易事務の仕事に就いたのに、取り扱うのは決められたフォーマットの英文書類だけで語学力を意外と活かせない…というケースもあります。イメージしていた貿易事務と現実とのギャップに苦しむ貿易事務も多く存在します。
貿易事務志望に求められる具体的なスキル・資格や人柄
貿易事務には、特別な学歴や資格は必要がないとされています。ただし、前出の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」によると、実際に貿易事務の仕事に就いている人の77.4%が大卒であることが分かります。詳しく確認してみましょう。
ある程度の学歴とコミュニケーション能力
「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」の「しごと能力(どの能力がどの程度必要かグラフにしたもの)」では、貿易事務に必要なスキルは「傾聴力」が「外国語を読む(4.2)」「外国語を聞く(3.4)」外国語で書く(3.9)」「外国語で話す(3.5)」をおさえ4.5とトップとなっています。
こうした結果からも、ある程度の学歴とコミュニケーション能力は必須と言えます。また、語学を業務にすることから、語学力はあった方が良いに決まっています。語学力を証明する資格としては「TOEIC」「日商ビジネス英語」が有名ですが、特に前者については応募資格に「TOEIC●点以上」と設定されることも多いため受験して高得点を狙いたいところです。貿易事務の応募資格で散見する条件は500~650点なので、650点を目標にすれば良いでしょう。
なお、「入職前の実務経験」については、「特に必要ない」が22.6%と最高値を示しています。経験者が優遇されるのは当然ですが、未経験でも十分に活躍できるというデータは心強いものです。
貿易実務検定を取得する
参考まで、貿易実務に関する代表的な資格として、日本貿易実務検定協会の「貿易実務検定®」があります。資格取得により貿易実務のエキスパートを証明できます。難易度が高い順にA級、B級、C級とあり、令和3年7月開催のC級試験の合格率は65.8%。テキストや問題集も購入できるので独学での資格取得も可能です。ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
貿易事務への転職を未経験や中途から目指すには?
未経験や中途から貿易事務への転職を目指すには、いくつか方法があります。確認していきましょう。
未経験OKの求人を探す
貿易事務の仕事には一定の語学力と専門知識が必要です。未経験や中途から目指すのは不可能ではありませんが、最低限の語学力は身につけなくてはいけません。
しかし、実際の求人を確認すると、応募資格は「語学力不要」「読解程度」など企業によってさまざまです。語学力に自信がない未経験や中途が貿易事務を目指すなら、語学力不要かつ未経験OKの求人を探すことからスタートさせましょう。ただし、企業が優遇するのは、未経験<経験者なのもお忘れなく。
語学力に自信がないなら学ぶ努力を
少しでも転職を有利にしたいのであれば、スクールや独学で語学力を身につけるのが現実的です。学んだという姿勢は面接時に意欲のアピールにもつながります。
転職エージェントに相談する
未経験や第二新卒でも努力次第で貿易事務の仕事に就くことは可能です。ただし、ただでさえ人気の職種でハードルが高いため、転職のプロである転職エージェントに力を借りることをおすすめします。在職中でも効率的に転職活動が可能です。特に未経験や第二新卒に特化したエージェントなら成功事例も多く抱えているし、安心して相談できます。
こちらの記事では、未経験や第二新卒におすすめのエージェントをご紹介しています。エージェント選びに活用してください。
未経験や中途から貿易事務の転職を目指す方法をまとめると…
- 未経験OKの求人を探す
- 語学力に自信がないなら学ぶ努力を
- 転職エージェントに相談する
おわりに:「学ぶ」努力で未経験から憧れの貿易事務へ!
未経験からの貿易事務の道のりは確かに優しいものではありません。それでも、語学力を身につける、資格を取得するなどの方法で、転職成功を目指すことは十分可能です。実務については入社してから学べるので心配は必要ありません! まずは「学び」で自分のレベルをアップさせましょう。