JR・私鉄の鉄道会社は第二新卒や既卒を採用しているの?評判・口コミを含めて検証してみた
JRは、1987年に日本国有鉄道(国鉄)が分割民営化して生まれた会社です。JR北海道は萌黄色、東日本は緑色、東海は橙色などコーポレートカラーが法人によって違うので、「JR」と聞いて思い浮かべるロゴマークの色は、住んでいる地域によって違ってくるでしょう。
一方、東武や西武、京王や京成などを代表とする民営鉄道事業者(私鉄)は民間の企業が経営する鉄道会社で、鉄道事業以外にも百貨店などのサービス業、不動産事業、レジャー事業など、多角的に事業を展開しているのが特徴です。
日本中の人々をあらゆる土地へ送り届け、また日常の通勤の足となり、物流の拠点としてもおおいに活躍している鉄道会社は、日本にとって必要不可欠な企業といっても過言ではありません。鉄道が好き、人の役に立ちたい、安定した収入を得たいなど、鉄道会社への希望理由はさまざまでしょう。
生活に密着した企業である鉄道会社に、第二新卒や既卒からでもチャレンジしたいと考える人は多いのではないでしょうか。鉄道会社各社は、第二新卒や既卒を採用しているのでしょうか。評判や口コミも含めて検証してみました。
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なんてことのないように、是非この記事を参考にしてみてくださいね。
この記事のもくじ
鉄道会社(JR・私鉄)は第二新卒・既卒の採用をしているか?
JRは、2009年春から既卒の採用を積極的に行っており、「中途採用」だけでなく「新卒採用」でも既卒の応募を可能としています。新卒採用の応募資格を確認してみると、2021年時点で「2020年4月から2021年3月までに大学院、高等専門学校を卒業(見込)・修了(見込)の方もしくは2017年4月から2020年3月までに卒業・修了された方」とあります。
募集要項を見てみると、第二新卒も歓迎とされている場合が多いです。既卒者と同じく、新卒として応募してみても良さそうです。
ただし、中途採用は年に1度しか実施されず、総合職とエリア職によって応募資格も採用人数も異なります。難易度が低いのは「高卒以上」が応募資格であるエリア職ですが、安定した転職先であり倍率も高いため、内定を獲得するのは茨の道でしょう。
一方私鉄においては、第二新卒や既卒はJRよりもさらに苦戦を強いられるでしょう。これは、私鉄各社の採用人数が年に数十人と少人数だからです(JRが毎年全国で1,000人前後を採用していることを鑑みても、この数値が明らかに少ないことは察することができますよね)。
例えば、関東私鉄で最大規模の東武鉄道においても、第二新卒者歓迎としている社会人採用の2020年入社者は、わずか数十名に留まっています。
結論としては、第二新卒や既卒が鉄道会社に転職するルートも可能性も存在することにはしますが、一般的な転職活動をするだけでは門前払いかも…?と言えそうです。
鉄道会社(JR・私鉄)の事業内容は?
JRは、旅客鉄道事業や貨物鉄道事業などをはじめとして、旅行業、倉庫業、広告業、図書・雑誌の出版業、金融業、損害保険代理業その他の保険紹介代理業、一般土木・建築の設計及び工事業、電気供給事業、清涼飲料水・酒類の製造及び水産物の加工・販売業など、ほかにもさまざまな事業を展開しています。幅広い分野で事業を展開しており、公共交通機関を利用すること以外にも、私たちの生活に密接に関わっている会社であることがわかります。また、「JR東日本」「JR西日本」「JR東海」など、地域ごとにJRのグループ会社が設置されています。
私鉄については、鉄道事業を基盤として、百貨店などの流通・サービス業、宅地開発やマンション分譲といった不動産事業、例えば、東武鉄道が運営する東京スカイツリーや東武動物公園などに代表されるレジャー事業、映画館などの娯楽施設など、幅広い事業を展開しています。JRと異なる点は、より地域の暮らしに密着し、まちづくりの一端を担っていることでしょう。
鉄道会社(JR・私鉄)の業界事情
コロナ禍によりインバウンド需要の低下をはじめ人々の移動が困難になったこと、テレワークの普及、終電時間の繰上げなどを要因に2020年以降、鉄道会社は苦境に立たされてきました。事実、大手鉄道会社は軒並み営業赤字に転落(※)。また今後も、少子高齢化の影響により鉄道会社は業界規模が縮小していくと考えられています。そこで各社が起死回生の一環として取り組んでいるのが、事業の多角化です。
例えば、駅がある地域が再開発などで活性化すると、駅の利用者が増加→商業施設やホテル事業なども相乗効果で活性化すると考えられます。そうしたアンテナやニーズをいち早くキャッチし、新たな事業に取り組むことによって、赤字経営から黒字経営への転換を図ります。
また、特に地方路線においては、豪華な内装やサービスに特化した観光列車の開発も進んでいます。電車=交通手段、ではなく、観光スポットとしての地位を確立し、新たな市場を創生するというムーブメントは今後も活発化していくことでしょう。
(※)参考:鉄道大手18社、全社が最終赤字 4~6月期: 日本経済新聞
大手各社の具体的な施策は、下記の通りです。
JR東日本
鉄道業界最大手のJR東日本は、売上高の約7割を運輸事業が占めています。流通・サービス事業、不動産・ホテル事業がこれに続きます。現在、「変革2027」というコンセプトを掲げ、運輸事業の基盤を安定・強化するとともに、今後さらなる成長を見込める非鉄道事業の収益拡大に努めています。
具体的には、2027年度に全収益の5割をECや不動産などの収益とすることを目指して、2021年度には主要駅の駅ビルに実店舗を出店するなどの施策に取り組みます。
また、コロナ禍の鉄道利用者の減少を受けて、2021年春に東京から100km圏内の各路線でダイヤ改正を実施。終電時間を繰り上げることとしました。これにより、深夜帯に線路保守作業を行う作業員数の人手不足解消も見込んでいます。
JR東海
JR東日本に次いで鉄道業界第二位の売上高を誇るJR東海。東名阪地域を営業エリアとし、東海道新幹線が収益の大半(9割)を占めています。中長期的には、東京―名古屋間を40分、東京―大阪間を67分で結ぶ超伝導リニアによる新幹線計画を進めており、機電系の人材確保にも注力しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大につき経営が厳しくなり、打開策として2021年1月には会社発足以来初となる従業員の一時帰休を実施、全体の運行数も1割程度減らすなどの施策に取り組みました。
東急
東京都・神奈川県を主な営業エリアとし、沿線に自由が丘や二子玉川などの高級住宅地を多く擁しているのが東急の特徴です。鉄道事業のほか、都市開発事業、生活サービス業、国際事業など幅広く展開。売上高の半分以上を占めるのが、東急百貨店や東急ストアを始めとする生活サービス事業です。沿線の開発で、地域住民たちの暮らしを支えています。
新型コロナウイルス感染症の影響により全事業で減収減益となるも、平成27年の仙台国際空港運営株式会社の設立を皮切りに空港経営に参入、2020年には北海道のクルーズトレインの運行にも着手するなど、鉄道事業以外の事業拡大を積極的に進めています。
東京メトロ
東京メトロ(東京地下鉄)は、都心部から周辺地域にかけて9路線の地下鉄を運営する鉄道会社です。鉄道事業のほか、駅併設の小売・飲食店、沿線を中心とした不動産事業も展開しています。
コロナ禍においては利用者が大幅に激減し、2004年の民営化以来初の赤字となりました。経営の安定化に向けて、設備投資や広告宣伝費の削減などに取り組んでいますが、先行きは不透明となっています。
鉄道会社(JR・私鉄)に入社できたらどんな経験を積める?
鉄道会社に入社できれば、手厚い福利厚生に守られながら堅実にキャリアを積み重ねていくことができます。技術職であれば、電気・機械・土木・建築・ITと、5つの分野に分かれており、それぞれ携わる仕事がかなり違ってくるため、自分のこれまでのスキルを活かせるのはどの分野なのかきちんと吟味しておくのがいいでしょう。
電気分野の技術職は、列車制御システムや情報通信設備などにおける工事・開発計画、施工管理、メンテナンスを行います。鉄道の核となるシステムを整える仕事なので、大いにやりがいを感じられますね。機械分野の技術職は車両そのもののメンテナンスとリニューアルに携わり、土木分野であれば線路の整備はもちろんのこと、駅や周辺施設の開発推進を行います。
建築分野の技術職は、駅舎の計画・設計と工事管理、駅を中心とした開発プロジェクトの推進業務を行います。安全性や利便性向上のための建築研究にも携わることができるでしょう。IT分野であれば、列車運行管理システムを開発・整備するのはもちろんのこと、キャッシュレス決済システムやアプリ開発に関わることになります。なお、ITと鉄道サービスで新しい価値を創造するためのIT戦略を練っていくという、大いにやりがいのある仕事に携われるでしょう。
もちろん、鉄道会社各社には技術職だけではなく、乗務員や鉄道営業をはじめとした前線での仕事や、経営資源マネジメントを行う経営企画、人事、総務、広報、法務などさまざまな職種があります。鉄道や物流で人々の生活を支えていることに誇りを感じられるうえ、大きな仕事に参加しているという意識を持てるので、自然とモチベーションは高まります。
どんな仕事内容なの?
鉄道会社の具体的な仕事内容を職種別に紹介します。駅や車両に関する仕事以外にも、さまざまな職種が存在します。
運行管理
電車がダイヤ通りに運行するための管理や指令を行います。実務を担当する運転手や車掌のほか、駅構内の駅員なども含まれます。電車を安全に運行させることが最大のミッションであり、トラブル時にはその対応にも追われる最前線での仕事となります。
整備
車両の保守点検、整備を担当します。車両のみならず、線路や信号、通信機器などについても保守点検、整備を行う場合もあります。車両についての専門的な知識はもちろん、周辺地域への知識や理解が必要であり、基本的には昼夜を問わず屋外での作業となるため体力が求められます。
土木・建築、電気
駅構内や線路、周辺地域の工事、建設作業などを行うのが土木・建築担当者です。電気担当者は、変電所や電車線、踏切などの整備・点検を行います。これらの仕事は外部に委託するというよりも、各鉄道会社の技術職担当の社員が行っている企業が多いようです。
駅構内の開発・運営
鉄道が運行するためには車両や線路だけではなく、乗客が乗り降りするための駅が必要となってきます。駅構内を充実させることで駅の価値が高まり、利用客が増加→鉄道会社の売り上げにもつながります。そのため、駅構内の開発に力を入れている企業が増えています。その一環として、駅構内のスペースを利用するイベントなどにも尽力しています。特に「○○物産展」などはよく見かけるのではないでしょうか。
不動産開発
駅周辺のマンションやショッピングセンターなどを建設することに注力している鉄道会社も数多く見受けられます。これは、駅だけではなく沿線そのもののブランド価値を高めることで収益拡大を狙うというもの。鉄道業界でありながら街づくりに参画できるという大きなやりがいがある職種です。
総合職
鉄道企業も一般企業なので、当然人事や総務、営業などの「ナカ」の人は存在します。仕事内容は一般企業と変わりません。一般的には入社後数ヶ月から数年は現場(駅)勤務となり、鉄道事業の基本を身につけることが多いようです。
どんなスキルや知識が身につく?
鉄道業界はダイヤ通りに鉄道を運行させることがもっとも重要なミッションであるため、仕事を通じて自然と時間管理能力が身につくことでしょう。また、同様の理由でリスク管理・対策・対応能力や冷静な判断力、忍耐力も培うことができます。
また、鉄道業界に限った話ではありませんが、特に鉄道業界はチームの連携が求められます。一人ひとりがきちんと仕事をこなすことで、利用客の安心・安全が守られます。こうした意識を強く持つことで人間として生きる上での責任感も養うことができるでしょう。
ジョブローテーションが可能でさまざまな分野の仕事に挑戦できることもキャリアアップにつながります。もちろん転職にも有利に働きます。
鉄道会社(JR・私鉄)の求人や評判は?
鉄道などの社会に密接に結びついている事業に携われるので、人々の生活に貢献していることを実感し、やりがいを持って働けている社員が多いようです。社内ベンチャー制度などもあり、本人の意欲次第で常にチャレンジしていける環境も整っています。スキルアップを目指し、積極的に仕事をこなしていこうという気持ちがあれば、さまざまなことを吸収できる会社かもしれません。
また、福利厚生についても評判が良いように感じられます。例えばJRであれば、「自社の路線であれば無料で乗車できる」「特急及び新幹線は4分の1の価格で乗車できる」「会社独自のポイントを利用して旅行できる」など、社員ならではの特典が充実しているようです。
第二新卒から鉄道会社(JR・私鉄)を狙うなら?
第二新卒から鉄道会社(JR・私鉄)を狙うなら、新卒採用にチャレンジする道と、キャリア採用枠で応募する道とに分かれます。しかし、実は第三の道も存在します。それは、転職エージェントに登録する道です。それぞれ詳しくご案内しましょう。
例えば、JRの新卒採用は、第二新卒でも応募可能です。参考にJR東日本の総合職の選考フローをみてみると、エントリーシート登録後、SPIなどの適性検査を受けた時点で応募が完了します。その後、書類選考を行い、ワークショップやグループディスカッションを経て面接に至るという流れです。面接は、大企業には珍しく一回のみであるという口コミが多数見られます。
第二新卒からのキャリア採用枠であれば、JR東日本なら「中途採用(ポテンシャル)」枠で応募することになります。ただ、常時採用を行っているわけではなく、年度ごとの採用となります。
新卒採用も、中途採用も、1年に一度限りの勝負となるため、かなり狭き門です。しかし、転職エージェントに登録すれば、人員に空きが出たときの情報を素早くキャッチし、年度の途中でも転職のチャンスをつかむことができます。第二新卒から鉄道会社を狙うためのプランや、転職エージェントの選び方についてご案内しましょう。
第二新卒から鉄道会社(JR・私鉄)を狙うためのプラン
第二新卒から鉄道会社を狙うためには、いち早く転職エージェントへ登録しましょう。新卒枠やポテンシャル採用枠での転職を考えているとしても、まずは転職エージェントへ登録してしまえば、選考内容について適切なアドバイスを受けることができます。
とくに面接については、新卒採用でも一発勝負ということもあり、かなり入念に準備をして臨まなければなりません。そんなとき、転職エージェントに登録していれば、きめ細やかな面接指導を受けられます。現職に就きながら転職準備をするのは時間的にも肉体的にもかなりハードですが、エージェントがサポートしてくれるので過度な負担は避けられるでしょう。
こんな転職エージェントを選ぼう
鉄道会社(JR・私鉄)に第二新卒から転職するなら、大手の転職エージェント数社に登録を行いましょう。大企業に太いパイプがあるのも、未経験に近い若手の転職に強いのも、大手の特徴です。少なくとも2~3社に登録を行ったうえで、まずはカウンセリング面談を行ってもらいます。
面談を行ってもらったら、担当者との相性を見極めましょう。本当に信頼できて、サポートが丁寧なエージェントを選ぶのが転職成功のカギです。また、面接対策が充実しているかどうかも重要なポイントとなります。
なお、JRをはじめとする鉄道会社には多数のグループ企業があります。自分の転職理由や希望職種を振り返ってみたら、グループ企業への転職のほうが良いと判断する場合もあるでしょう。グループ企業のなかには、既卒採用を通年で応募受付しているところもありますから、転職のチャンスは広がります。
また、転職エージェントの中には、第二新卒や既卒に特化したサービスを展開しているところもあります。「どのエージェントに登録して良いか分からない…」といった場合は、そうしたエージェントにも登録することがお約束です。保有している求人も当然第二新卒や既卒向けなので、確実かつ効率的な転職への近道となります。ぜひ、下記の記事を参考にしてみてください。
鉄道会社は概ね安泰!だけど今後は…?
日本の鉄道会社は世界有数の安全性・正確性を誇り、公共インフラを担っていることからニーズも途絶えず、今後も各社の業績は安定すると見込まれています。そのため、求人ニーズも安定の高レベルをキープしています。
ただし今後の少子高齢化による人口減少を鑑みた時に、鉄道会社の利用者が減少することは明らかです。つまり、必ずしも収益が安定するとは限りません。
そのような状況下、鉄道業界で生き残るためには、各社の事業やサービス、職種などを比較検討し、将来性を見極めることが重要だと思われます。
ひとりで各社を比較検討するのは難しいですが、転職のプロである転職エージェントであればそうしたデータも保有しているので効率的に転職活動を進めることができますよ。ぜひ相談してみてくださいね。