第二新卒・既卒からNTTデータなどのSIerを目指すには?【企業の選び方】
IT業界への転職を検討した時に、候補のひとつとしてあがってくるのがSIer(エスアイヤー)企業ではないでしょうか。だけどその実体がいまいち分からない…という方も多いと思います。なんだか難しそうだし、第二新卒でもトライできるのだろうか。そんな不安もありますよね。そんな方は、まずはSIerへの正しい理解を深めることが先決です。それにより、選択肢は確実に拡がるはずです。
また、今の自分の現状や、将来のビジョンも見えてくるはずです。この記事では、IT業界を目指す第二新卒の道しるべになるべく、SIerについて詳しく掘り下げていきます。
せっかく就職できたのに思っていたのと違う…
なんてことのないように、是非この記事を参考にしてみてくださいね。
この記事のもくじ
SIerとは?
SIerとは、「システムインテグレーター(System Integrator)」の略語で、「エスアイヤー」と読みます。そもそも、システムインテグレーション(SI)は、システム開発や運用を請け負うサービスのことを指し、このSIに「~する者(er)」を組み合わせてSIerと呼ばれるようになりました(日本独自の造語なので注意)。
つまり、SIerはSIを行う企業ということになります。日本の代表的なSIerに、NTTデータ、富士通、日本IBMなどが挙げられます。企業やサイトによってはSIerのことを「SI企業」「ITベンダー」と呼ぶこともあります。
SIerの歴史は1987年、当時の通産省が創設した「システムインテグレーション認定制度(2011年に廃止)」から始まりました。これは、情報システムの企画から構築、運用など、ありとあらゆる業務を一貫して提供可能な企業(SIer)を登録・認定する制度で、これによりITノウハウを持たない企業は安心して情報化投資することが可能に。→全日本で業務のIT化が加速したというわけです。
なお、SIerと混同しやすい略語として「SE」「SES」があります。「SE」は「システムエンジニア」の略で、システム開発を行う人のことを指します。「SES」は「システムエンジニアリングサービス」の略で、SEを派遣するサービスのことを言います。SIerは企業、SEは人、SESはサービス(ビジネスモデル)ということだけ覚えておけば良いでしょう。
- SIer(エスアイヤー)は「システムインテグレーター」の略語で日本独自の造語
- SIerはシステム構築を請け負う企業のことを指す
- SIerには30年以上の歴史がある
SIerでできる仕事とは?
クライアントのシステム構築に関する工程を一括で請け負い、リクエスト通りのシステムを提供するのがSIerの仕事です。その仕事内容は下記の通りですが、1社のSIerがすべて請け負う場合と、大手SIerから業務を委託された中小のSIerが②以下の下流工程を担当する場合とがあります。
①企画※業務分析、コンサルティングを含む
②システム設計/プログラム開発
③ハードウェアやミドルウェアの選定・調達・設置
④システムの導入サポート
⑤システムの保守/運用
SIerを業種の分類ごとにわけると…
SIer業界は大きく5つの系統に分類され、各SIerで仕事の領域やクライアントも異なります。そのため、SIerへの転職を検討する場合は、どの系統が自分と相性が良いのかあらかじめ把握しておきましょう。
ユーザー系
企業の情報システム部門から独立したSIerのことを指します。インハウスのようなもので、親会社やグループ会社から受注した案件のシステムに携わります。そのため、比較的安定した受注が見込めますが、親会社の経営が危なくなると共倒れになる可能性があるのが弱みです。NTTデータや野村総合研究所、ソフトバンクテクノロジーなどがこれに該当します。
メーカー系
PCのハードウェアメーカーやコンピューターメーカーのソフトウェア部門が独立したSIerです。親会社が開発したハードウェアを利用しているクライアントの案件を受注することもあります。富士通、日立、NECなどが代表的です。
独立系
特定の親会社は持たず、独自にSIerとして起業した企業です。親会社からの受注やバックアップがないので自社で営業なども行わなくてはなりません。仕事内容は多岐にわたりますが、その分やりがいがあるのが特徴です。規模も数十人の零細から数千人の大企業までさまざま。独立系を代表するSIerに、トランスコスモス、富士ソフトなどが挙げられます。
外資系
海外に本社がある、グローバルなSIerのことを「外資系」と呼びます。外資系のため給与が高く、国をまたいだ大規模なプロジェクトに携われることが魅力ですが、成果主義のため成果を出さなければ簡単にクビを切られてしまう恐れがあるのがネックです。仕事内容は企画やコンサルティングなど、上流工程が中心なことがほとんどです。アクセンチュアやOracleなどは外資系SIerの真骨頂でしょう。
コンサル系
技術というよりもコンサルティングや提案、交渉など経営戦略に特化したSIerです。クライアントも日本有数の大企業ばかり。仕事内容は超上流工程がメインで、そのほかの工程は下請けに委託するため、マネジメント力なども求められます。システム構築の現場スキル自体は強くないため、前線で活躍したいと考えるエンジニアには不向きかもしれません。野村総合研究所、日本総合研究所などのエリート企業がこのタイプに該当します。
大手SIerの企業例
大手企業とは、業界内でのシェア率や知名度が高い企業のことを指し、従業員数や資本金などとは関係ありません。SIer業界における大手企業は大規模プロジェクトに携わっているのが大きな特徴で、その受注金額は数千万~数億円規模になることも。それだけ開発規模が大きいと自社で一貫して請け負うことは不可能となるため、上流工程のみ担当し、下流工程は下請けSIer に発注することが多く見られます。
日本で大手SIerと呼ばれる企業の中から、「最大手」と呼ばれる大手of大手を紹介します。
NTTデータ
NTTグループの主要企業としてシステム開発を行うNTTデータ。日本のSIer業界最大手として知られ、2018年には売上高2兆円を突破しました。特に官公庁や金融業界、医療業界に強みがあり、クライアントも東京ガスや日産自動車、NHKなど日本有数の大企業が名を連ねています。
また、海外でも積極的に事業を展開。現在51カ国・地域に地理的カバレッジを拡大し、約11万人体制を確立しています。
富士通
メーカー系SIerの代名詞でもある富士通。SIを行っている「テクノロジーソリューション」は富士通の売上高の60%を占めています。大きな特徴は、このセッション内でサーバーやストレージなどを開発するHW事業も展開していること。SIとHWの相乗効果で他SIerの追随を許さない驚異的な売上を実現しています。
また、大企業のため、プロジェクトの規模も桁違いです。例えば国策主導で進められる個別化医療領域にも進出、その一環としてゲノム医療関連の大規模SIプロジェクトも推進しています。
野村総合研究所(NRI)
日本初の民間総合シンクタンク・旧野村総合研究所と、野村コンピュータシステムが合併し、野村総合研究所として1965年に創業。野村グループということから、金融・証券分野では国内トップクラスの開発実績を誇ります。
また、「未来創発企業」として、さまざまな先進的な取り組みを推進。その一例として2017年には、みずほ証券がコンプライアンス目的で行う通話モニタリング業務を音声認識技術と人工知能を組み合わせて効率化・高度化するシステムの稼動を開始しました。
第二新卒でSIerへの転職は難しい?
では実際に第二新卒からSIerに転職することは可能なのでしょうか。実際の求人を見てみると、「第二新卒歓迎」「文系歓迎!」「経験不問」とするSIerも散見しますが…。リアルな転職可能性について解説します。
第二新卒の転職難易度
SIerへの転職そのものは非常に難易度が高いですが、実は第二新卒に限ってはそう難しいことではありません。第二新卒と言えば、まだ20代前半。企業もスキルはさほど求めておらず、ポテンシャルを重視することがほとんどです。
また、社会人経験があるためそうした教育も不要で、ほかの企業風土に染まっていないところも第二新卒が転職に有利な理由のひとつです。さらには、IT業界が慢性的に人手不足というのも追い風になっています。
それでもSIerへの転職は、「ランクに拠る」ということを覚えておきましょう。例えばNTTデータなどSランク(日本最大手)のSIerであれば、よっぽど職種を選ばない限りはさすがの第二新卒でも難しいでしょう。前述の「文系歓迎」「経験不問」などを前面に押し出しているのは、下流工程を担当する人手不足の中堅~零細SIerと考えて良いかもしれません。
どんな人が転職できるのか?
いくら第二新卒がほかの立場よりも転職に有利とは言え、ほかの企業よりも難易度が高いSIerに至っては「学歴」を重視する傾向にあります。と言うのも、前述の通り、第二新卒はまだ社会人経験が浅いため、仕事においてアピールできるスキルや成果がほぼありません。そのため企業は「学歴」で判断するのです。もちろん高学歴であればあるほどランクが高いSIerへの転職が可能になります。学歴に自信がない場合も、現職がIT業界でプログラミング経験がある方なら、中小SIerで即戦力として活躍できることでしょう。
SIer転職で注意してチェックしたい点と企業の選び方
SIerには5種類の分類があることは先ほどお伝えした通りです。なんとなく「この系統は無理だな」「この系統なら転職が成功するかも!」とイメージがついた方もいらっしゃるかもしれません。そんな方に向けて、もう一歩踏み込んだ「転職目線の」SIer企業の選び方を転職理由別に指南したいと思います。
まず、とにかく大きなプロジェクトに携わってキャリアアップしたい!という方なら、系統を問わず、企業の売上高に着目してください。なぜなら、売上高が大きい=事業規模が大きく、市場への影響力があるということを意味するからです。売上高が高いのは当然大手SIerばかりで肩を落としてしまうかもしれませんが、明確な目標やキャリアプランなどが共感されたなら、奇跡が起こる可能性もあります。
次に、生涯現役、現場でモノづくりを極めたいという方なら、職人気質のメーカー系の中でも中堅下請けSIerのチョイスが賢明です。SE未経験であれば、企業の規模はどうあれ教育体制が整っているところを選ぶのがポイント。
語学が堪能でワールドワイドに活躍したい!実力で勝負したい!という方は、迷わず外資系を狙いましょう。外資系企業は日系企業よりも採用自体は緩いため、スキルさえあれば意外と簡単に入社できることもあります。まだスキルが足りていない第二新卒の場合は、そこまで規模が大きくない外資系×独立系のSIerを視野に入れても良いかもしれません。数年現場でスキルを磨いたら、大手外資系SIerに転職することも夢ではないかも。
休日、残業時間、福利厚生など、ワークライフバランス重要派なら大手一託です。その時特にチェックポイントとなるのが、営業利益です。営業利益は、事業で得た利益のことを指し、この値が大きければ大きいほど給与や福利厚生で社員に還元しているケースが多いです。また、そうした大手SIerで働く社員は平均年齢も高めで潤沢であり、良くも悪くも仕事にスピード感がないためIT業界ならではのギスギスも存在せず、精神状態も保ちながら働くことができます。
以上、ここまではあくまでも転職理由からのSIerの選び方であり、自分の方向性が定まったのであれば企業研究、そして転職エージェントへの登録が欠かせません。非公開求人も含めて求人数が豊富な大手エージェントのほか、IT業界に特化したエージェントにも登録することをおすすめします。そうした特化型のエージェントであればネットの口コミよりもリアルな企業の内情に精通しているし、転職成功へと導く的確なアドバイスをくれます。
特化型エージェントの中には第二新卒に特化しているエージェントもあるので、まずこれらのエージェントに複数登録して情報を収集するのが良いでしょう。
SIer企業の選ぶポイントは、
- キャリアアップしたい!という方なら、系統を問わず、企業の売上高に着目を。
- 現場でモノづくりを極めたいという方なら、職人気質のメーカー系の中でも中堅下請けSIerを。
- ワールドワイドに活躍したい!実力で勝負したい!という方は、迷わず外資系を。
企業選びのポイントをおさえたら、次は転職エージェントも選んでみましょう。第二新卒に特化した転職エージェント探しなら、下記の記事がおすすめです。
確かにSIerのハードルは高い。だけど恐れることはない
突然ですが、Googleで「SIer」と検索すると、関連して出てくるキーワードに「ランキング」などと一緒に「やめとけ」「オワコン」などネガティブなワードが表示されることが多いようです。おそらくあなたも、SIerの実態を知りたくてこの記事にたどり着いたのではないでしょうか。
そして読んでみて、「自分にはやはりハードルが高い」と感じた方も多いと思います。
結論から言うと、伸びしろがある第二新卒の場合、SIerはそれほどハードルが高いものではありません。また決して「オワコン」でもありません。正しい選び方をすることで「オワコン」は避けることができるのです。
正しい選び方をするためには、自己分析と情報収集をすることが重要です。その2つをサポートしてくれる転職エージェントの力を借りて、「オワコン」ではないSIer企業への転職を勝ち取りましょう!